人体模型作る人……それ、私じゃないか?
デアゴスティーニ。知らない人はいないと思う。
でも、イタリアの会社だということは、知らない人が多いと思う。
ジョバンニ・デ・アゴスティーニさんという地理学者が1901年に設立した地理研究所がはじまりで、現在世界33ヵ国に現地法人を持つ、グループ企業だということも。そんなデアゴスティーニが日本のチビッ子たちのために発刊した新シリーズが『おしえて!おしゃべりガイコツ』。
しゃべるガイコツの名前は「ホネッキー」、完成までに70週(70号)、身長約90センチ、心臓やら腸やら、内臓もついてくるらしい。かなり本格的な人体模型が、赤いスカーフを巻いて陽気に笑っている。
こんなスットンキョーなものを1年以上かけて組み立てるのは、いったいどんな人なんだろう?

いやいやいやいや。時間がない。場所がない。同居している姑に説明するのが面倒。
あ、でもうちの息子、ガイコツ作ったことあるわ。

焼き物のしゃれこうべに、釉薬を塗って焼いただけだったけど、漬物石として活躍したなァ。息子、ガイコツ好きなんだった。そういや娘も、「高学年になったら、科学部に入りたい」と言っていたなァ…。科学室には必ずあるよね、人体模型。
やっぱり、ガイコツ組み立てるの、私やわ!
というわけで、「デアゴスティーニの人体模型を最後まで作ってみたー!」(実際に「つくってみた」という完了形になるのは一年以上あと)、スタート!

デアゴスティーニ1号めで組み立てるのは「頭がい骨」
折しも、うちの双子、小学校2年の「生活」の授業で出産について勉強してから、やたらと自分たちが生まれたときのことについて聞いてくる。
実をいうと、彼らは救急車でとなり町の大病院に運ばれて、緊急帝王切開でこの世に出た。ヒゲの研修医に腹を切られて出てきたはいいが、通常よりひと月早かったため、いわば進化の途上のような状態。娘にはサルのように産毛がみっしり生えており、息子にはマンガみたいな出べそがついていた。
それからのひと月、本来はお腹の中で進行するはずの成長過程を、母親の私はライブで見てきたわけだ。だから、「人体」の発生については、けっこうくわしいつもり。

まず、しゃれこうべから始めるわけだが、双子は何より、「相方に出し抜かれる」ことをもっともきらうので、
一、今回は娘が封を開ける。
一、そして息子が中のものを取り出す。
一、組み立ての工程は、母が指示した順番でかわりばんこにやる。
ここまで、よく通る声で二回、双子に言い聞かせてから、ブツを机の上に置く。
面倒だけど、このひと手間をかけないと、取り合い・小突きあいで結局よけいに時間がかかるため。そして次回は必ず息子が封を開けることを約束する。

封を開けるとパーツは3つ。
目や鼻がついている顔面1つと、横顔の左右2つ。
これを、ネジでつなぎあわせる。まずネジを顔面裏に入れて2,3回しめてから、左右の頭がい骨パーツをはめ、ネジをしめる。
小さ目の+ドライバーが必要。小2だと、パーツを持って支える人と、ねじをまわす人、どっちもできるので、1つずつ交代でさせた。

実際の頭がい骨は、三つだけでなく、もっとたくさんの数の骨が集まっているので、その縫合部には、ギザギザ模様がついている。























赤ちゃんの頭がい骨の、パーツどうしに透き間があるのは、産道を通るときに柔軟に形を変えて衝撃を吸収するため、とか、脳の成長をさまたげないようにするため、といった理由があるらしいですよ。





CMの効果ってすごいのね。
350本の骨は、成長につれ、合体して大きな骨になっていくので、パーツとしての数は200本まで減るらしい。知りませんでした。
2号目のテーマは「歯」。ホネッキーのパーツは、下あごと、上の歯、下の歯がついてきた。
上の歯担当は娘。
下の歯担当は息子。
左の奥歯から順番に。
と、これだけゆっくり連呼して、あとは子どもにまかせる。

歯は、プラモデルの小さいパーツのように、まとまってくっついているので、ねじってひとつずつに切りはなしてから、あごにあいている穴にさしこんでいく。

前歯はちょっときついので、ぎゅっと押し込む。

下の歯は、下あご装着前に入れていくから、けっこう簡単。歯を差し込む場所さえ教えてあげれば、園児でもじゅうぶん可能な作業。
歯といえば、こんな思い出が。
幼稚園の歯科検診で虫歯が見つかって、初めての歯医者が印象的だったようで、帰宅後に歯医者さんごっこが始まった。
といっても、双子のどちらもが歯科医をやりたがるので、患者役は母親の私。
そのときのメモから↓







ああ、なつかしい!
ごっこ遊びに延々とつき合わされ、つまらない役をずっとやらされても、幼児のSF的発想に「これ、いただき!」とありがたく思う瞬間がある。
それをメモするのが私の育児モチベーションになっていたなァ。
ホネッキーを幼児と一緒に組み立てたなら、ものすごい突飛な発想が出てきそうだ。
さて、歯科健診のときのABCは一般的に乳歯につけられた符号で、Aは中切歯、Bは側切歯、Cは犬歯、Dは第一乳臼歯、Eは第二乳臼歯。それが抜けて永久歯になると1番から5番になる。
ホネッキーの歯もそれぞれの歯が、ちゃんと、それぞれの形をしているので、表裏まちがえないように、奥歯から順番に、穴に差し込んでいかねばならない。でも、意外とできる。小2ともなると。冊子に載っている大きな工程写真を見ながら、自力でやっておる。
子どもの歯は20本、大人の歯は32本。さて、歯で性別がわかるでしょうか?









6歳ごろに生えてくる奥歯が6番(六歳臼歯)、その奥に12歳ごろ生えてくるのが7番(12歳臼歯)、そのさらに奥に生えたり生えなかったりするのが8番(親しらず)。













うちの双子は、亡くなったおじいちゃんのお骨を火葬場で拾ったことがあるので、ノドボトケについて知っているのだった。火葬場の人が「立派なノドボトケです。ホトケさんが座っている形してるでしょう」といって、見せてくれたのだ。
そうやって、一度だけの経験を、子どもはしっかり覚えていて、こういうときに記憶のひきだしから出してくる。
今のうちに、そのひきだしにできるだけたくさん入れてやるのが、親のつとめなのかもしれない。
と、しんみりしたところでリアルすぎる舌が登場。
3号めのパーツは舌と、舌を支えるパーツなのだ。
3号目は「リアルすぎる舌」。そして、思い出の娘仮死事件
組み立て工程としては、まず下あごを上あごにくっつける。
トイレットペーパーを交換するとき、ホルダーの芯がのびちぢみする、あの要領で取り付けます。

続いて、舌を土台に差し込んで今回は終了。舌って、本当は長いんだな、ってことがわかります。























いま、赤ちゃんがいるお母様がた。
熟睡している赤ちゃんの口を、そーっと開けて、見てみてください。ギョッとします。
でも、それがノーマルなのです。












自由研究に決定!?動物の舌には味らいがどれくらいあるのか













こうやって、どんどんいろんな動物の味らいの数を調べて言ったりして、自由研究みたいにするのもいいですね。デアゴスティーニの冊子にのっていることも、「へぇ!」「なるほどねー」「マジか」という発見があるのですが、そこから興味を広げていくと、もっとおもしろくなりますね。
とりあえず、私ら親子は、これからしばらく、焼肉屋さんでタン塩を注文するたびに、草食動物と肉食動物の味らいの数について語るだろうと思います!
<つづく>

埼玉育ち、大阪在住。8歳男女の双子の母。無類の犬好きで、著書に『白い番犬チルー』(幻冬舎)などがあるが、未熟児で生まれたわが子たちの発育過程を目の当たりにし、人体の神秘にも感銘を受ける。その育児エピソードは、たるいしまこさんの絵と中村翔子さんの作で、『おはなしカイとナツ あるふたごちゃんのものがたり』(リーブル)という絵本になっている。年中無休自営業のすき間に、週一で剣道をするのが何よりの発散。
デアゴスティーニの人体模型を双子と一緒に最後まで作ってみた~!vol.2
デアゴスティーニの人体模型を双子と一緒に最後まで作ってみた~!vol.3